移動に便利で育児には欠かせない抱っこひもですが、抱っこひもからの転落事故が多発しています。転落してしまうと大怪我につながります。使い方を守って安全に使用しましょう。
抱っこ紐からの転落事故が多発!
都内だけで5年間で116件もの転落事故
2014年に提出されたデータによると、東京都内で5年間で116件もの抱っこ紐からの転落事故が起こっています。死亡した例はなかったのですが、入院を要する重症事例は26件と多いです。東京都のヒヤリ・ハットに関するアンケートでは、乳幼児と同居する保護者3000人の2%が抱っこ紐等から転落の経験があり、7%が転落しそうになった経験があると答えました。以下に東京都「抱っこひも等の安全対策」のPDFをリンクします。
https://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/anzen/kyougikai/h26/documents/documents/0226gaiyou.pdf
どういった子供がどういう時に転落するのか?
転落事故の月齢は 1 歳以下が多く、特に入院を要する重症例は月齢4か月以下に集中していました。転落時の使用状況は、「抱っこひも等を着脱する際」、「抱っこからおんぶへと抱き方 を変更する際」、「前かがみになった際」が多いという結果でした。
0 歳の時に抱っこひもでおんぶをしようとしたらひもから子供がすり抜けてしまい、フローリングに頭から落ちてしまった。泣かずに顔が真っ青になり、その後嘔吐したので救急車で病院へ行った。CT を撮ったが、脳震盪で異常なし。
抱っこひもで娘を抱っこしたまま、床に落ちたものを取ろうとしたらスポッと床に落ちた。ぐったりしてしまったので慌てて救急病院に連れて行ったが大事には至らなかった。
転落事故での外傷は?その検査と治療は?
抱っこひもからの転落事故で、重症例では外傷性くも膜下出血や硬膜外出血により入院しています。また、頭蓋骨骨折や脳震盪などの症例も多数ありました。いずれも頭部CT検査ですぐに分かりますので、高いところから転落した場合は病院を受診して頭部CT検査を受けることを勧めます。特に嘔吐やけいれん、意識が悪いなどの場合はすぐに受診しましょう。
・外傷性くも膜下出血
脳の表面を覆う膜であるくも膜の下の空間に組織の挫滅により生じた血液が貯まった状態です。頭痛や嘔吐、意識障害、けいれんなどの症状が表れます。ほとんどの場合はくも膜下に貯まった血液は自然と吸収されるため、数日間入院して経過をみます。ただ出血量が多いと脳の圧力が亢進することがあり、その場合手術が必要になります。
・硬膜外出血
頭蓋骨が骨折し、頭蓋骨とそのすぐ下にある硬膜の間にできた血液が貯まった状態です。頭痛、嘔吐、意識障害などの症状が現れます。血腫が小さい場合は入院して経過観察となりますが、血腫量が多いと手術で血腫の除去を行います。
メーカーの安全対策はどうなっている?
SGマークとは?
SGマークは、Safe Goods(安全な製品)の略号で、財団法人製品安全協会が安全な製品として必要なことなどを決めた認定基準を定め、この基準に適合していると認められた製品にのみ表示されるマークです。1973年消費生活用製品安全法に基づき開始された制度で、対象となる消費生活用製品は、乳幼児用製品、福祉用具、家具、家庭用品、厨房用品、スポーツ用品、レジャー用品など100品目を超えます。SGマーク付き製品の欠陥により人身事故が発生した場合、被害者一人につき最高1億円の損害賠償を行うこととなっています。ただし、あくまで製品の欠陥による人身損害なので、使い方が間違っている場合や物損の場合、また海外での事故の場合は損害賠償の対象になりません。
抱っこひものSGマークの基準が厳しくなった
抱っこひもからの転落事故が多発したため、東京都商品等安全対策協議会から基準改正の要望書が提出され、2015年3月に抱っこひもの安全性の基準が見直され、SGマークの基準が厳しくなりました。「抱っこひもを緩めた状態で使用したとしても赤ちゃんが簡単には落下しない」という新基準が設けられたのです。メーカー側もSGマーク新基準に合うよう製品を見直しました。
SGマークの抱っこ紐は?
SGマークの抱っこ紐は実は意外と少ないのです。日本の基準なので日本の製品は多いのですが、意外と有名メーカーはSGマークが付いていないのです。ベビービョルンはSGマークが付いていません。エルゴベビーもSGマークが付いていなかったのですが、2015年からベビーウエストベルトを付けるようになり、SGマークを取得しました。アップリカのコランハグ、ナップナップ、グレコのルーポップなどがSGマーク付きです。
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転落事故を防ぐポイント
東京都が「抱っこひもからの転落事故に気をつけて」というリーフレットを配りました。
・おんぶや抱っこをする時、降ろす時は低い姿勢で行う
子供は思わぬ動きをすることがあります。着脱は立ったまませず、 椅子に座るなど低い姿勢で行いましょう。
・ひもの緩み、留め具を必ず確認する
着ている服の厚みや使う人の体格に合わせて、ひもの緩みがないように毎回調整しましょう。短時間の使用であっても油断せず、留め具が留まっているか、必ず確認しましょう。
・抱っこで前かがみになる時は、手で支える
前かがみになる時は子供を手で支え、頭が下向きにならないように、膝を曲げ、腰を落とすようにしましょう。
海外での転落事故は?
アメリカでも抱っこ紐からの転落事故は100件以上報告されています。ベビービョルン、ベコなどの有名メーカーもリコール対象となりました。死亡事故も起こっていますが、いずれもスリングを使用しての窒息によるものだったそうです。
スリングの危険性は?
スリングによる窒息事故が報告されており、間違った使用法での窒息に気を付けましょう。基本的に赤ちゃんの顔が見える状態でスリングは使うようにすれば心配はいりません。また、抱っこ紐やスリングで横抱き・ゆりかご抱きをした場合、赤ちゃんの足がお母さんの身体にきつく押し当てられ、股関節脱臼になる可能性があるので注意しましょう。
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