赤ちゃんの利き手はいつ決まる?

利き手っていつ決まるのだろうか?

私は右利きだが、何歳で右利きになったかなんて覚えていない。

ふと思い立って調べてみた。

利き手は右?

2ヶ月半頃まで我が子は右ばかり向いているなと思った。生後3ヶ月に近付くと首が座ってきたせいか、どっちも向くようになって、左向きで寝ていたりするけれど、それまでは圧倒的に右向きだった。

産院から退院して自宅のベビーベッドに置いたときから右向きなのだった。右側に私たちのベッドがあるし窓も右にあるからかなとも思うけれど、体を逆向きにしてもやはり右を向く。無理やり頭を左に向かせても、嫌がってすぐ右に向く。

生後2週間頃から指しゃぶりをするようになったが、顔が右を向いているせいか指しゃぶりもやっぱり右手ばかり。

ずっと頭は右向きで右手しゃぶりをしているから右利きなのかなと考えた。

左利きの割合は?

左利きは1割以下

そもそも右利き、左利きの割合はどのくらいかというと、世界的にみると左利きの人の割合は約10~15%。日本人はそれよりもやや少ない7~8%(※1)。 女性より男性の方が左利きが多いそうだ。ちなみに戦前は矯正が厳しかったため、書字の左利きが1%にも満たなかったことが1934年の論文から分かる。

左利きは矯正するべき?

利き手を矯正した場合、優位であるはずの利き手が麻痺しているかのように脳が訓練され、非利き手側で補われる。また、頻繁に指導が入ることにより、劣等感を抱きやすくなる。左利きの矯正はするべきではないそうだ。

 

利き手はいつ頃どうやって決まる?

利き手がいつ頃決まるのだろうと調べてみた。

ゲゼルの利き手の研究

一番有名な利き手の研究はアメリカの小児科医であり発達心理学者としても有名なアーノルド・ゲゼル(Gesell)によるものだ。ゲゼルはルイーズ・エイムスと共に利き手の研究をして1947年にThe development of handednessという論文にまとめた(※2)。

生後8週から10歳までの子供の利き手を観察した結果、生後16~20週で左利き、1歳までに両利きから右利きに変わり、1歳半で両利き、2歳で右利きになる。2歳半から3歳半で両利きに移行し、4歳から6歳で右利き、その後8歳頃で利き手が固定する。子供は左利き、右利き、両利きなど、利き手の交代を経てから利き手が決まるということだ。

利き手の固定年齢は諸説あり

ゲゼルは4歳頃で利き手が決まっていくと論文に記したが、McManusは3歳頃でだいたい決まっているとしている(※3)。 また、日本の研究では塩谷裕香によると9か月までに利き手が観察されると述べている(※4)。

利き手がいつ頃決まるかはこのように諸説あり定かではないが、3,4歳頃までに利き手がはっきりしていくことが多いようだ。

生まれる前からすでに利き手は決まっている?

超音波診断で利き手が判明?

利き手の固定は諸説あるが、利き手はすでに胎内で決まっているのではないかという論文も出ている(※5)。

超音波診断で妊娠36週以降出生までに胎児の92%が右手の親指を吸っていて、左手を吸っている胎児は8%のみであり、その数字は一般的な右利き、左利きの頻度と一致しているという。指しゃぶりだけではなく、妊娠10週目で約85%の胎児が右腕を左腕よりも動かす傾向があったそうだ(※6)。

遺伝も影響する?

ある程度遺伝が関係すると言われている。

両親が右利きの場合左利きの子供が生まれる確率は約8%、どちらか一方が左利きの確率は約22%、どちらも左利きの確率は約36%という結果が出ている(※7)。

頭の向き癖が利き手と関係ある?

ずばり、頭の向き癖と利き手は関係があるようだ。

頭の向き癖から将来の利き手を予測しうる場合が多いとゲゼルは1947年の論文に述べている(※1)。また、Michelによると、乳児の65%が向き癖は右で、その後も右利きになることが多いそうだ(※8)。

向き癖は直さなくてよい?

小児科医をしているとよく1か月健診などで訊かれるのが「頭の向き癖があって頭の形が気になるけれどどうすればよいか」ということ。

基本的に向き癖は直さなくてもよく、寝返りするようになれば頭の変形も目立ちにくくなる。実際我が子も生後2ヶ月半頃になるとどっちにも向くようになり、向き癖はなくなった。相変わらず右手しゃぶりは続けているけれど。

どうしても気になるようであれば、逆の方向からなるべく話しかける、窓や光を向き癖の反対になるように寝かせる、おもちゃを向き癖の反対側に置く、バスタオルや枕で調節するなどの方法がある。

 

だが、単なる向き癖ではなく疾患が隠れている場合もあるので、その場合は注意する。具体的な疾患としては、筋性斜頸、骨性斜頸、筋緊張の異常、反対側の股関節開排制限によるものなどである。単なる向き癖の場合は、容易に反対を向けることができるが、それらの疾患では反対を向けてもすぐに元の方向を向く、反対を向けることに抵抗がある。

 引用文献

※1. 橘廣. “幼児における利き手の発達と利き手の変更.” 東邦学誌 42.2 (2013): 129-142.

※2. Gesell, Arnold, and Louise B. Ames. “The development of handedness.” The Pedagogical Seminary and Journal of Genetic Psychology 70.2 (1947): 155-175.

※3. McManus, I. Chris, et al. “The development of handedness in children.” British Journal of Developmental Psychology 6.3 (1988): 257-273.

※4. 塩谷裕香, et al. “4 カ月および 9 カ月の乳児における上肢運動の偏側性.” 脳と発達 42.4 (2010): 287-290.

※5. Hepper, Peter G., Sara Shahidullah, and Raymond White. “Handedness in the human fetus.” Neuropsychologia 29.11 (1991): 1107-1111.

※6. Hepper, Peter G., Glenda R. Mccartney, and E. Alyson Shannon. “Lateralised behaviour in first trimester human foetuses.” Neuropsychologia 36.6 (1998): 531-534.

※7. McManus, Chris. Right hand, left hand: The origins of asymmetry in brains, bodies, atoms and cultures. Harvard University Press, 2004.

※8. Michel, George F. “Right-handedness: A consequence of infant supine head-orientation preference.” Science 212.4495 (1981): 685-687.

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