赤ちゃんが泣いていると、お腹が空いているのか眠たいのか分からなくて困ることがありますよね。今、赤ちゃんの泣き声や表情から感情を判別する研究が進められていて、その内容を紹介したいと思います。
赤ちゃんは何を伝えようとしているの?
オススメ度 ★★★★☆
読みやすさ ★★★★★
知識量 ★★★★☆
同タイトルの書籍を読んで、参考になったことをまとめました。著者の篠原一之は小児精神科・心療内科医師で、長崎大学院神経機能学教授です。乳幼児行動などを研究しているそうです。2006年に出版された本なのでやや古い内容もあるかと思いますが、国内外の研究を基に妊娠中の過ごし方や赤ちゃんとの接し方などが書かれていて勉強になりました。やさしく書かれているので大変読みやすいです。主に妊娠中から産後すぐまでのことが書かれているので、妊娠初期に読むのがいいと思います。
妊娠中のストレス
胎児はお母さんの感情を敏感に感じ取る
赤ちゃんはお腹の中にいるときからお母さんの喜怒哀楽を敏感に感じ取っている。エコーで観察すると、お母さんが楽しい気持ちのときに赤ちゃんは活発に動き、悲しいときはほとんど動かないことが分かった。
妊娠中のストレスが子供に影響?
2005年の研究で、妊娠中にストレスや不安を感じていたお母さんの子ども(10歳)を対象に唾液中のコーチゾル(ストレスホルモン)濃度を調べたところ、妊娠中に強いストレスを感じていたお母さんの子どもは10歳になってもコーチゾルレベルが高いことが分かった。
胎児期から味覚は発達している?
胎児は羊水を味わって飲んでいる
子宮内は羊水で満ちており、胎児は平均して1日約1リットルの羊水を飲み込んでいる。胎児の舌にも味覚を感じるセンサーである味蕾があり、妊娠3ヶ月頃から形成が始まる。妊娠7ヶ月では胎児は苦味や甘味の判断ができ、甘味を好む。1930年代の羊水過多の治療法として、妊婦の羊水中にサッカリンという人工甘味料を注入すると胎児は甘い羊水をたくさん飲むという方法があった。
羊水で経験した風味は胎児に影響する?
ペンシルベニア大学のメネラ博士らは、胎児期と出生直後に経験した風味の離乳食を好むと2001年に研究結果を発表した。2000年ベノア・スカール博士らが、出生直後の新生児を対象にお母さんが食べたものの匂いが出生後の食べ物の好みに影響を与えるかを調べたところ、赤ちゃんはお母さんが妊娠中に食べたものの匂いに反応することが分かった。赤ちゃんは羊水や母乳を介して様々な味や匂いを追体験しているのだ。
アルコールとタバコの影響
赤ちゃんもアルコールで気分が良くなる
2005年の研究で、アルコール中毒になりやすい原因は胎児や新生児の頃までさかのぼることが分かっている。妊娠中のラットが飲酒をすると、胎児は羊水を通して、新生児は母乳を通して、アルコールの匂いや味を感じ、糖分という報酬が結びついて学習されてしまう。
妊娠中のタバコは危険
妊娠中に母親が喫煙をすると、胎児期の中毒と新生児期の離脱症状を発症させる。妊娠中のタバコを吸うと、生まれた子どもはニコチン中毒だけではなく、ADHDや反社会的行動を示すリスクが高まることが2005年のイギリスの調査で分かった。
赤ちゃんの感情が分かる?
泣き声で訴えを判別
長崎大学医学部の研究グループは、赤ちゃんが泣いたときの声と状況を比較分析して調べたところ、赤ちゃんは求めている状況によって泣き声を変えていることが分かった。赤ちゃんの状況別の泣き声を集め、そのモデルから自動的に泣いている理由が分かるプログラムを作成したところ、66%の確率(偶然当たる確率の約3倍)で泣いているときの気持ちを識別できた。
甘えたいとき
「抱っこして」「退屈だよ」といった甘えたいときには、比較的高い声で泣く。泣き声はするのに涙は出ていないことが多い。
怒っているとき
「おもちゃが見つからない」「おむつが汚れて気持ちが悪いよ」と怒りを訴えているときには、甘えのときよりもさらに甲高い声で泣き叫ぶ。ウェーンというよりもギャーッと激しい感じで、火が付いた泣き声である。時折低い声も混じる。
お腹が空いたとき
お腹が空いたときには、泣き声に”m”の音が入ることが多い。
眠い、悲しいとき
眠いときの泣き声は甘えのときよりもやや低く、「お母さんがいない」「構ってもらえない」といった悲しい気持ちのときにはさらに低い泣き声になる。
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