右利き・左利きの科学

ふだん何気なく使っている利き手ですが、なぜ右利きなのか、右利きはいつからなのか、利き手は遺伝するのか、など様々な疑問が浮かびますよね。利き手に関する本を読んでみました。

右利き・左利きの科学

赤ちゃんの頭の向きが右向きで指しゃぶりも右ばかりだったので右利きなのかなと考えました。いろいろ論文などを調べて、「赤ちゃんの利き手はいつ決まる?」という記事を書きました。私たちは当たり前のように利き手で物を書いたりごはんを食べたりしてますが、利き手がいつ決定するのか利き手はどうやって決まるのかということに今まで疑問を持ちませんでした。そこで利き手に関することが書いてある『右利き・左利きの科学』という本を読んでみました。1989年に出版されている書籍なので古い内容も多いのですが、それまでに分かっていた利き手の科学について記されています。

人類はいつから利き手を持つようになったか?

最も古い利き手の痕跡は300〜200万年前の石器に認めると主張する学者もいますが、確かの証拠ではないようです。200〜150万年前になると、貝塚から左側に傷を持ったサルの頭蓋骨がたくさん発見されており、これは当時の人間が右手に斧を持っていたことを意味しているので、右手効きが多かったということを物語っています。石器時代後期には、洞窟の壁に手形を押す風習が見られ、その手形の数を調べると、右手の方が多いということです。紀元前3000年から現代までの約5000年の間に創られた芸術作品から推測した右手利きの割合は、すべての時代で約90%と一貫しています。人類はいつの時代も右手利きが優位でした。

人種や民族、文化で利き手は違う?

欧米人、アジア人を始め、エスキモーやソロモン諸島の原住民などでも利き手を調べたところ、常に右手利きが90%前後を占めました。人種や民族に関係なく、利き手は右利きが優位ということが分かりました。

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

エジソンのお箸1 【しつけ箸 対象2〜7才】 【ケイジェイシー】
価格:1134円(税込、送料別) (2016/12/5時点)

10歳頃は左利きになる?

8歳から10歳にかけて右利きの頻度が一時的に低下することがいろんな調査で分かっています。国を変えても時代を変えても、10歳頃で左利きが多くなるのです。それはどうしてでしょうか?アメリカの心理学者ゲゼルは、子供の行動を観察し、運動能力や言葉などが一段階高いレベルに移行する際にはこれまでに獲得した能力がいったん低下することを発見しました。この一時的低下は、新しい運動様式を獲得する過程で、古い運動様式をいったん解体し再編成するためだとゲゼルは説明しています。10歳頃に右手利き頻度が一時低下するのは、利き手が飛躍的な発達をとげる前の準備であり、発達過程の一つと考えられます。もう一つの説は、脳の右半球と左半球はいつも競い合っていていつもは左半球が優位を保っていて右半球を押さえ込んでいるが、8〜10歳頃では右半球の発達が左半球の発達に近付き優位性を脅かしているため、右手利きの割合も減少するということです。

左利きは語学力が低い?

ハーバード大学で数学を得意とする中学生と国語を得意とする中学生の利き手を比較したところ、数学が得意な中学生の約20%は左利きであり、国語を得意とする中学生の約2倍の頻度でした。他の調査で、学部別に比較したところ、美術、建築学、数学を専攻する学生に左手利きが多く、文学部の学生は一般と変わらなかったという結果でした。左利きの天才にはレオナルド・ダ・ヴィンチがいます。彼は美術、音楽、建築学、医学とまさに万能の天才の名にふさわしい才能の持ち主ですが、唯一苦手だったのがラテン語だったそうです。また、20世紀最大の物理学者の一人でもあるアインシュタインも左利きですが、彼の伝記によると3歳になっても話ができなかったそうで、その後も吃音に悩まされたようです。左利きの天才は絵画や彫刻、スポーツなどのものの形や位置関係に関わる分野を得意としており、視空間認知能力に優れていると言えそうです。すなわち、脳の右半球が優位であるということです。一方、脳の左半球が司っている言語能力は不得意であることが多いようです。

利き眼と利き手は関係ある?

人間は2つの眼でものを見ていますが、眼の幅だけ離れた視点から見るので、網膜に結ぶ映像は同一ではありません。少しだけ異なる映像は脳内で一つに統合され、立体視が可能となっています。しかし両眼で見ることが都合が悪いときがあります。例えば顕微鏡で除く場合、両眼を開いていると全く異なる映像が重なって邪魔になります。その場合、自然と利き眼で見ていて、他方の眼に映る映像は抑圧されます。身の周りの何か細いものに指で狙いを定めると、片方の眼を閉じて利き眼で見ると目標と指が重なりますが、利き眼でない方で見るとはずれているのが分かると思います。あるいはウインクをしようとすると、利き眼では簡単にウインクができますが、利き眼でない方ではウインクはしにくく、両眼を閉じようとしたり顔を歪ませたりします。効き眼と利き手の間に関係性はあるのかを調べたところ一致しており、右手利きの人は右眼利きになりやすいということが分かりました。その理由は古くから問題となっていましたが、パーソン(1925)は利き手と利き眼が同じ側にあった方が槍を投げたり弓を射たりするのに命中率が高く、それだけ生き残る可能性が高いという仮説を提唱しています。

最後に

科学的に論文などを引用して利き手に関する事柄を集めたこの本は大変参考になりました。しかしいかんせん情報が古く、胎児期の利き手を超音波検査で調査したヘッパーの研究などには触れておらず、物足りなさを感じました。

コメント

タイトルとURLをコピーしました