不妊治療専門の病院に行くのはなかなか勇気がいるが、ためらわずに初めから専門病院に行くべきだ。そして、体外受精までなるべく早く進んで行くのがよい。それが妊娠への確実な道だ。
私が不妊に気付くまで
結婚して子作りを始めた
私は2009年(平成21年)に28歳で結婚したのだが、その前1年間ぐらいは同棲していて、そのときは結婚もしていないし仕事も忙しかったため避妊していた。結婚後1年ぐらいは女医としての仕事が忙しく、積極的には子作りをしていなかった。結婚1年半ぐらいからそろそろ子供をと思い始め、子作りを始めた。
基礎体温を測ってみた
2011年(平成23年)に30歳となり、今のタイミングで子供が欲しいと思い、基礎体温を測り始めた。忙しい上に朝が苦手な私は基礎体温をしっかり毎日測るのは苦痛だった。当直や朝ギリギリに起きたときは測れず、どうしてもデータが途切れ途切れになってしまったが、測ったところだけグラフにしてみたところ、あまり異常はなさそうだった。
排卵検査薬を使ってみた
次に排卵検査薬を購入して排卵日を的中させようとした。いつが排卵日かが分かるので子作りする時期を見極めることができるのは便利だった。しかし妊娠検査薬と違って薬局でわざわざ口頭で「排卵検査薬を下さい」と伝えないと出してもらえないし、値段も高いし、気軽には使えないのがデメリットだった。今は排卵検査薬を通販で買うことができて便利になった。
子作りしてから2年間経ち、不妊症なのかもしれないと思った
基礎体温表は異常なさそうだし、生理は順調だし、今まで子宮や卵巣に異常を言われたことはないし、排卵検査薬で排卵日に子作りしている。しかしそれでも妊娠しない。不妊の定義は今は1年だがその当時は2年だったため、2013年(平成25年)6月、32歳のときに私は不妊症なのかもしれないと思い、近くの婦人科に子宮頸がん検診のついでに相談した。
近くの婦人科に不妊症のことを相談した
不妊の相談は勇気がいる。子宮がん検診をするついでなら軽く相談できるかなと思って、近くの婦人科を受診した。しかし、待合室には子連れの女性もいて、受付で不妊のことも相談したいと口にするときについ小声になってしまう。おじいちゃん先生に診てもらい、ホルモンなどを検査することを言われる。一週間後に再診になったが、結果は「特に異常はない」と言われて終わりだった。
子宮頸がん検診と血液検査の結果
ちなみに結果は以下の通り、確かに異常はなかった。
細胞診:子宮頸部NILM陰性Ⅱ 悪性細胞は認められません。
CA125 9.6
プロゲステロン 0.1>
E2 61
LH 9.5
FSH 5.1
プロラクチン 18.7
TSH 3.29
FT4 1.5
FT3 3.2
不妊治療専門病院でも同じ検査をすることに
近くの婦人科で不妊の相談をして検査したのは子宮頸部細胞診の他にCA125、プロゲステロン、E2、LH、FSH、プロラクチン、TSH、FT4、FT3だったが、結局次に不妊治療専門の病院に行った時にホルモン検査は同じものを取られたので、採血されてお金を取られるだけ損だった。不妊治療専門病院に初めから受診すればもっと早く不妊治療を始められたし、不妊治療専門をうたっていないクリニックに不妊の相談をするのは時間とお金の無駄でしかないと思う。
不妊治療を始めた
S産婦人科にした理由
結局その後不妊治療をスタートさせたのは2014年(平成26年)1月、33歳になってからだった。私は仕事が忙しかったため、日曜日も診療をやっている病院でないと難しく、家や職場からの近さなどからS産婦人科を選んだ。評判のいいKレディースクリニックも考えたが、タイミング療法や人工授精も行いたかったこと、卵管造影検査も超音波検査ではなく造影検査でしっかり行いたかったことからS産婦人科にした。
不妊治療専門病院は初診を取るのが一苦労
不妊治療専門病院は予約が一杯のため、初診を取るのに朝一番で電話したりキャンセル待ちをしたりしなければいけない。そろそろ不妊治療専門病院に行った方がいいかなと思って電話しても初診が取れるのは2ヶ月後だったりする。やっと初診が取れてS産婦人科に受診したのだが、まずは病院のきれいさに驚いた。番号で表示されるシステムもだいたいの時間が分かってよかった。次に驚いたのは、病院のあまりの混雑ぶりだった。日曜日に受診したので、かなり混んでいて、座る場所がなかった。こんなに不妊に苦しんでいる人たちがいるんだと少し勇気づけられた。
不妊治療をして第一子を授かった
そして、私は不妊治療の検査として卵管造影検査、ホルモンや感染症などの血液検査、フーナーテストを行い、それらは特に異常がなく、タイミング療法、人工授精、体外受精と進んだ。結局S産婦人科では妊娠できずにKレディースクリニックに転院してそこで第一子を授かることができた。私の人生計画では30歳くらいで出産を考えていたが、不妊治療をしてやっと34歳で出産に至ったのだ。不妊治療をして思ったのは、歳を取るのは早いということだ。
不妊治療専門病院にまず行って体外受精まで行うべき
不妊治療は不妊治療専門病院しかできない
私はつい不妊治療専門病院に行くのをためらって近くの婦人科に初め行ってしまったが、全くお金と時間の無駄だった。不妊治療は特殊なので、不妊症の検査も治療も不妊治療専門病院でしかできない。私が行った婦人科はおじいちゃん先生で不妊症のことは詳しくなさそうで、「異常はない」以外の説明はなかった。私は医師なので不妊症の知識があり不妊治療をするために不妊治療専門病院を受診しなければと思うことができたが、もしそういった知識がなければ異常がないならこのまま自然に妊娠するかもと思う人が多いのではないかと思う。
不妊治療専門病院を早く受診すべき理由
不妊治療専門病院では、初めは卵管造影検査やホルモン検査などを行い、タイミング療法、人工授精、体外受精と進んでいくのだが、排卵は1ヶ月に1回なので、1ヶ月1回しか治療はできない。排卵していない月もあるので、多くても1年間に10回程度である。初めの数ヶ月は検査やタイミング療法、人工授精に費やすことになるし、妊娠する確率の高い体外受精にたどり着くまでにかなり時間がかかってしまう。なので、早く不妊治療専門病院を受診し、さっさと諸検査を行い、体外受精に進むべきだ。
体外受精の成功率は高い
体外受精に関して、理解不足な人が多いようだ。漢方薬や鍼灸などは行うのに体外受精まではしないという人が多い。体外受精というと人工的に子供を作るなんてそこまでしたくない、体外受精でできた子供のリスクが心配だという声が上がる。それは非常にもったいないと思う。確かにお金はかかるが、体外受精だと成功率は約30%とかなり高い。ちなみに精子を注入する人工授精の成功率は約10%である。
体外受精はふりかけ法と顕微授精がある
身体の中で卵と精子が出会って受精して着床する、その過程は医学が発達している現在も不明な点が多い。卵と精子が受精するところだけ試験管の中で行うのが体外受精だが、その後は自然に任せるしかない。体外受精はたった一部分だけを手助けしているにすぎない。体外受精は精子を卵にふりかけて自然に受精するのを待つふりかけ法と、顕微鏡で卵に精子を注入する顕微授精がある。初めはふりかけ法で、それでダメなら顕微授精を行うのが一般的だ。
体外受精すればすぐ妊娠する?
私は基礎体温を付けたり排卵検査薬を使ったりしてタイミング療法に近いことを2年間自分でしていたので、病院でタイミング療法をやっても結果は出ないだろうと思っていた。それよりも確実に結果が出せる体外受精に進みたいと思った。というか、体外受精さえ行えばすぐ妊娠できると思っていた。約30%という体外受精の成功率から、2,3回体外受精行えば妊娠できるだろうと計算していた。結局10回近く体外受精を行うことになったのだが。
みな自分がまさか不妊症とは思わない
私は初め自分がまさか不妊症だとは思わなかった。そのうちできるだろうと思っていたのが、なかなかできなくてこれはおかしいと思い始め、排卵検査薬を毎回使ってもできなかったときには不妊治療を決意した。クリニックに通うようになっても、まだ自分が重度の不妊症とは信じられずに、卵管造影検査した後は妊娠しやすいためこの検査の後にできるかもしれないななどと軽く考えていた。各種検査で異常なく、タイミング療法、人工授精、体外受精と進んでいったときも、次の方法で妊娠できるかもしれないと希望を持っていた。35歳未満で生理も順調で子宮や卵巣の病気もないのだからと思っていた。周りの友人で不妊治療を行っている人たちも、多くがまさか自分がと思っていた人が多い。
一年間子供ができなければ不妊症である
生理不順はないしまだ20代だしという方も、一年間子供ができなければそれは不妊症だということを頭に入れておいてほしい。1996年のアメリカの論文では、初めの1,2周期での妊娠の確率は30%だが、その後の妊娠の確率は半年を過ぎると10%以下とガクッと下がる。また、2003年のドイツの論文でも、タイミング療法を行ってどのくらいの人が妊娠するか調査したところ、半年で約80%、一年間で約90%が妊娠したという結果だった。つまり、半年で妊娠しない場合は不妊症の可能性が出てきて、一年間妊娠しなければ体外受精などの治療に進むべきだということだ。
コメント